ご友人を亡くされ、ご自身のこれからを真剣に考え始めた矢先、ご主人に「縁起でもない」と一言で片付けられてしまう…。その寂しさと焦り、お察しします。
ですが、ご安心ください。ご主人が本当に嫌がっているのは「終活」そのものではなく、「終わりの話」をされることだけかもしれません。
この記事では、非協力的なご主人を、あなたの「人生の総仕上げ」の最高のパートナーに変える、とっておきの会話術をご紹介します。カギは「終活」という言葉を封印することです。
読み終える頃には、ご主人との次の会話が、少し楽しみになっているはずです。
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なぜご主人は「終活」の話から逃げてしまうのか?
奥様、ご主人が「縁起でもない」とおっしゃる気持ち、男として少し分かる気がします。何を隠そう、私も定年直後に妻から終活の話を切り出され、「俺はまだ終わってない!」と、へそを曲げた経験がありますから。
多くの男性にとって、仕事は社会との繋がりであり、自分の価値そのものでした。その看板を下ろした直後に「終わりの話」をされると、まるで「あなたの役目はもう終わりましたよ」と宣告されたようで、寂しさと、少しばかりの反発を感じてしまうものなのです。
よく私の講演会でも「夫が全く話を聞いてくれません」というご質問を受けますが、そのご主人の心の奥には、「まだ人生を楽しみたい」「終わった人間だと思われたくない」という、ささやかなプライドが隠れていることがほとんどです。ですから、まずはご主人のその気持ちを「そうよね、まだ早いわよね」と、一度受け止めてあげることから始めてみませんか。
魔法の言葉は「楽活(たのしかつ)」。夫婦でやりたいことリストを作ろう
ご主人の心をほぐす魔法の言葉、それが「楽活(たのしかつ)」です。終活が「終わる」ための活動なら、楽活は「楽しむ」ための活動。つまり、「死ぬまでにしたいことリスト(バケットリスト)」を、夫婦の対話のきっかけとして活用するのです。
「終活」という言葉が持つ、どうしても避けられないネガティブな響き。この言葉を「楽活」や「これからの人生計画」というポジティブな言葉に置き換えるだけで、ご主人の警戒心は驚くほど解けていきます。なぜなら、バケットリストの作成は、停滞しがちな夫婦の対話を再活性化させる、最も効果的でポジティブな起爆剤となるからです。「死ぬまでにしたいこと」ではなく、「これからの人生で、二人で楽しみたいこと」。この小さな言い換えが、ご主人の心を驚くほど開かせます。
実践!ご主人が思わず乗り気になる「やりたいことリスト」3つのステップ
では、具体的にどうやってご主人を「楽活」に誘えばいいのでしょうか。私が多くのご夫婦にお勧めしている、失敗しない3つのステップをご紹介します。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 完成したリストを手に「これをやりましょう!」と、ご主人にいきなり提示してはいけません。
なぜなら、男性は「やらされる」ことが何より苦手だからです。たとえ楽しいことであっても、奥様主導で決められた計画には、素直に乗れないことがあります。大切なのは、ご主人自身に「俺が考えた計画だ」と思わせること。そのための、ちょっとした作戦が必要なのです。
ステップ1:まず、あなたが一人で「やりたいこと」を10個書いてみる
「豪華客船で世界一周」「孫と海外旅行」「もう一度、夫婦でダンスを習う」…。どんなことでも構いません。まずは、あなたが心からワクワクすることを、自由に書き出してみてください。
ステップ2:「私の夢、ちょっと聞いてくれる?」と、雑談として共有する
夕食の後など、リラックスした時間に、「私ね、こんなことしてみたいんだ」と、完成したリストを楽しそうに話してみてください。ポイントは、ご主人に同意を求めないこと。あくまで「私の夢の話」として、楽しげに語るのがコツです。
ステップ3:「そういえば、あなたの夢って何だった?」と質問する
そして最後に、こう尋ねてみてください。「昔、バイクに乗りたいって言ってなかった?」「釣りが趣味だったわよね」。ご主人が若い頃に話していた夢や、好きだったことを、あなたが覚えている、という事実が、ご主人の心をくすぐります。そこから、自然と「夫婦でやりたいことリスト」作りが始まるはずです。
夫婦でやりたいことリスト(テンプレート)
| カテゴリ | やりたいこと | いつ頃? | 予算は? |
|---|---|---|---|
| 旅 | 昔行った、あの温泉にもう一度泊まる | ||
| 食 | 銀座の高級寿司をカウンターで食べる | ||
| 学び | 夫婦で英会話を習い直す | ||
| 健康 | 一緒にウォーキングを始めて、1万歩を目指す | ||
| 挑戦 | 楽器を一つ、マスターする |
「楽しい話」から「大事な話」へ。自然に終活に繋げる会話術
夫婦の「やりたいことリスト」作りが始まったら、しめたものです。実は、「旅行」や「グルメ」といったバケットリストの楽しい項目は、「健康管理」や「資産管理」といった終活の実務的な項目へと、自然な会話の流れで橋渡しする役割を持っています。
例えば、こんな風に会話を繋げてみてはいかがでしょうか。
「豪華客船で世界一周、素敵ね!(バケットリスト)」
↓
「でも、船の上で倒れたら大変だから、今のうちに二人でしっかり健康診断に行っておきましょうか。(健康管理)」
↓
「それに、費用も結構かかるみたい。これを機に、うちの貯金や保険がどうなっているか、一度きちんと整理してみない?(資産管理)」
↓
「せっかく整理するなら、この大事な情報を、子供たちのためにエンディングノートにまとめておけば、あの子たちも安心するわよね。(遺族の負担軽減)」
このように、「楽しい未来の計画」を万全にする、という前向きな目的があれば、ご主人も「大事な話」に耳を傾けやすくなります。
まとめ:最高の終活は、最高の人生計画そのもの
終活は、決して一人で黙々と進める、寂しい作業ではありません。ご主人と「これからどう生きるか」を語り合う、夫婦最後の、そして最高の共同作業です。
「死ぬまでにしたいこと」を語り合う時間は、お互いが忘れていた夢や、知らなかった一面を発見する、かけがえのない時間になるはずです。
この記事が、お二人の新しい対話の始まりとなることを、心から願っています。
[参考文献リスト]
- 株式会社鎌倉新書, “第6回お葬式に関する全国調査”, 2024年, https://www.kamakura-net.co.jp/company/press/6th-funeralsurvey/

